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国内市場の縮小を背景に、海外へ販路を拡大する越境ECを検討する企業が増えています。しかし、言語や関税、配送など特有の課題があり、始め方に悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、越境ECの基礎知識から具体的な始め方、メリットと失敗しないための注意点、費用、成功の秘訣までを網羅的に解説します。この記事を読めば、自社に最適な海外展開の方法を理解し、事業を成功に導くためのノウハウがわかります。
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1. 越境ECとは 基礎知識をわかりやすく解説
越境ECとは、国境を越えて行われる電子商取引(Eコマース)のことを指します。具体的には、日本の企業が自社のECサイトや海外のオンラインマーケットプレイスを通じて、海外に住む消費者へ商品を販売するビジネスモデルです。国内の消費者を対象とする通常のECサイトとは異なり、販売ターゲットが世界中の人々になるため、インターネットを活用した海外進出の有効な手段として多くの企業から注目を集めています。
これまで海外へ商品を販売するには、現地の商社を経由したり、海外に支店を設立したりと、多大なコストと手間が必要でした。しかし、インターネットと物流網が世界的に発展したことで、国内のECサイト運営と近い感覚で、比較的低リスクかつスピーディーに海外市場へアプローチすることが可能になりました。
これが、中小企業や個人事業主にとっても、海外展開が現実的な選択肢となった大きな理由です。この章では、そんな越境ECの基本的な仕組みから、なぜ今これほどまでに市場が拡大しているのか、その背景と今後の可能性について詳しく解説していきます。
1.1 越境ECの仕組みとビジネスモデル
越境ECの仕組みは、国内のECと基本的な流れは同じですが、「言語」「決済」「配送」「関税」といった海外取引特有の要素が加わります。まず、海外の消費者が日本の事業者が運営するECサイトや出店しているマーケットプレイスで商品を注文します。注文を受けた事業者は、クレジットカードやPayPalといった国際的に利用可能な決済サービスを通じて代金を受け取ります。その後、商品を梱包し、国際スピード郵便(EMS)や国際宅配便などを利用して、購入者のもとへ発送するというのが一連の流れです。
このプロセスにおいて、商品は輸出入手続きを経て国境を越えるため、相手国の法律や規制に基づいた関税やその他の税金が発生する場合があります。これらの手続きを誰がどのように行うかによって、ビジネスモデルはいくつかのパターンに分かれます。
主なビジネスモデルとしては、自社でECサイトを構築して直接販売する「直接販売モデル」、AmazonやeBayといった海外の巨大ECモールに出店する「マーケットプレイス出店モデル」、そして、これらに関わる複雑な業務を専門業者に委託する「代行サービス利用モデル」が存在します。どのモデルを選択するかは、企業の規模、扱う商材、ターゲットとする国、そして投入できるリソースによって異なります。
1.2 拡大する市場と今後の展望
越境ECの市場規模は、世界的に急速な拡大を続けています。その背景には、インターネットとスマートフォンの世界的な普及、国際物流網の整備、そして多様なオンライン決済手段の登場が挙げられます。これらのインフラが整ったことで、消費者は世界中の商品を簡単かつ安全に購入できるようになり、企業側も巨大なグローバル市場にアクセスしやすくなりました。
経済産業省の調査においても、世界の越境EC市場は今後も高い成長率で拡大していくと予測されています。特に、経済成長が著しい中国や東南アジア諸国では、中間所得層の拡大に伴い、高品質で信頼性の高い日本製品への需要が非常に高まっています。アニメや漫画といったポップカルチャーの人気も、関連グッズの販売を後押しする要因となっています。
今後は、AIによる自動翻訳の精度向上や、VR/AR技術を活用した新たな購買体験の提供など、テクノロジーの進化がさらに越境ECの可能性を広げていくでしょう。国内市場が縮小傾向にある日本企業にとって、越境ECは事業成長を実現するための極めて重要な戦略の一つと言えます。
2. 【メリット】なぜ越境ECで海外展開すべきなのか
国内市場の成長に限界を感じ、新たな収益の柱として海外展開を模索する企業が増加しています。しかし、海外進出には多額の投資や複雑な手続きが伴うため、二の足を踏むケースも少なくありません。
そうした中で、比較的低コストで始められる越境ECが、海外市場への新たな活路として注目されています。本章では、なぜ今、越境ECで海外展開すべきなのか、その具体的なメリットを詳しく解説します。
2.1 販路拡大で売上アップを狙える
越境ECに取り組む最大のメリットは、巨大な海外市場にアクセスし、売上を大幅に向上させられる可能性が生まれる点です。少子高齢化が進む日本では、多くの業界で市場の縮小が予測されており、国内の顧客だけをターゲットにしていては、企業の成長を持続させることが難しくなっています。
一方で、世界に目を向ければ、日本の何十倍もの人口を抱える巨大なマーケットが広がっています。特に経済成長が著しいアジア圏や、購買力の高い北米・ヨーロッパ圏の消費者に、インターネットを通じて自社の商品を直接届けられることは、大きなビジネスチャンスです。
これまでアプローチできなかった新たな顧客層を獲得することで、国内事業だけでは達成できない規模の売上拡大が期待できるでしょう。
2.2 日本の高品質な製品は海外で人気
「Made in Japan」という言葉に象徴されるように、日本の製品は「高品質」「高機能」「安全」といったイメージで、海外の消費者から厚い信頼を得ています。このブランドイメージは、越境ECにおいて非常に強力な武器となります。
例えば、精巧な作りが魅力のアニメのフィギュアやプラモデル、肌質への配慮が行き届いた化粧品、機能性に優れた文房具、そして繊細な技術が光る伝統工芸品などは、海外に多くのファンが存在します。また、国内ではニッチで競争が激しい商品であっても、海外市場ではユニークで価値のあるものとして評価されるケースも少なくありません。インバウンド観光客が帰国後にリピート購入する受け皿としても、越境ECは有効な手段です。
2.3 国内事業のリスクヘッジになる
収益源を国内市場だけに依存している場合、景気の変動や自然災害、パンデミックといった予測不能な事態が発生した際に、事業全体が大きな打撃を受けるリスクを抱えることになります。越境ECによって海外にも販路を確保しておくことは、こうしたカントリーリスクを分散し、経営を安定させる上で極めて重要です。
例えば、国内の消費が落ち込んだとしても、海外での売上が好調であれば、その損失を補うことができます。また、昨今のような円安の局面では、海外での売上を円に換算した際の実入りが大きくなるため、収益性の向上にも繋がります。複数の市場に収益の柱を持つことは、変化の激しい時代を乗り越えるための強力な事業基盤となるでしょう。
3. 【注意点】越境ECでよくある失敗と回避策
海外市場への展開は大きなビジネスチャンスですが、国内ECの常識が通用しない場面も多く、安易な参入は失敗につながりかねません。ここでは、越境ECでつまずきがちなポイントと、それを乗り越えるための具体的な回避策を解説します。事前にリスクを把握し、着実な一歩を踏み出しましょう。
3.1 言語と商習慣の壁をどう乗り越えるか
越境ECにおける最初の障壁は、言語と文化の違いです。機械翻訳に頼った不自然な商品説明や顧客対応は、企業の信頼性を損ない、購入をためらわせる大きな原因となります。また、日本では当たり前の丁寧な謝罪が、海外では非を認めたと解釈され、過度な要求につながるケースもあります。
この問題を回避するためには、まずターゲット国の言語に精通したネイティブスピーカーによる翻訳や監修が不可欠です。商品説明はもちろん、カスタマーサポートのメールテンプレートなども、現地の文化やニュアンスを汲んだ表現にすることが重要です。
さらに、現地の祝祭日やセール時期、宗教上のタブー、好まれる色やデザインといった商習慣を深く理解し、マーケティングや商品展開に反映させる必要があります。現地の文化に詳しいパートナー企業やコンサルタントと連携することも有効な手段です。
3.2 関税や法律で気をつけること
越境ECでは、国境を越える取引である以上、各国の関税や法律、規制への対応が必須となります。特に見落としがちなのが関税です。関税の計算が不正確な場合、商品到着時に顧客が想定外の高額な費用を請求され、受け取りを拒否されたり、大きなクレームに発展したりする失敗例が後を絶ちません。また、販売する商品が、現地の法律で輸入が禁止・制限されている成分を含んでいる(特に化粧品や食品、サプリメントで多い)ことに気づかず、税関で没収されてしまうリスクもあります。
対策としては、まず販売価格に関税を含めるか(DDP)、含めないか(DAP/DDU)を明確に定め、顧客に分かりやすく表示することが重要です。その上で、JETRO(日本貿易振興機構)などの公的機関が提供する情報を活用し、ターゲット国の輸入規制や必要な許認可を徹底的に調査しましょう。
特にEU圏向けの販売ではGDPR(一般データ保護規則)のような個人情報保護法への対応も求められます。自社での対応が難しい場合は、各国の法規制に詳しい通関業者や越境EC支援サービスを利用することを強く推奨します。
3.3 海外配送と在庫管理の課題
商品を顧客の手元に確実に届ける物流体制の構築も、越境ECの成否を分ける重要な要素です。海外配送は国内配送に比べてリードタイムが長く、配送コストも高額になりがちです。配送の遅延や、輸送中の商品の破損・紛失といったトラブルは、顧客満足度を著しく低下させます。また、高額な送料が原因で購入直前で離脱してしまう「カゴ落ち」も頻繁に発生します。
これらの課題を解決するには、商品の価格帯や重量、配送スピードを考慮し、国際郵便(EMS)や国際宅配便(DHL、FedExなど)といった複数の配送オプションを用意することが効果的です。もちろん、すべての配送に追跡サービスを付けることは必須です。
さらに、販売規模が拡大してきた際には、AmazonのFBA(フルフィルメント by Amazon)のように、海外の倉庫に在庫を保管し、そこから発送を行うフルフィルメントサービスを利用することで、配送期間の短縮とコスト削減が期待できます。在庫管理システムを導入し、国内外の在庫を一元管理することも欠品や過剰在庫を防ぐために有効です。
3.4 海外顧客とのトラブル対応
海外の顧客との間では、時差や文化の違いから、予期せぬトラブルが発生することがあります。例えば、問い合わせへの返信が時差のために遅れてしまい、顧客を怒らせてしまうケースや、返品・返金に関するポリシーが不明確なために、交渉が泥沼化するケースです。また、クレジットカードの不正利用である「チャージバック」のリスクも国内ECより高まる傾向にあります。
信頼を損なわないためには、まずサイト上に返品・交換・返金の条件や手順を明確かつ分かりやすく記載しておくことが大前提です。カスタマーサポートにおいては、時差を考慮し、可能な限り迅速に対応できる体制を整えましょう。多言語対応のFAQページを充実させたり、チャットボットを導入したりすることも有効です。
決済に関しては、3Dセキュアなどの本人認証サービスに対応した決済代行会社を選ぶことで、不正利用のリスクを低減できます。丁寧で誠実な対応を心がけ、海外の顧客とも良好な関係を築くことが事業継続の鍵となります。
4. 【始め方】越境ECをスタートする具体的な方法
海外市場への挑戦を決意したら、次はいよいよ具体的な準備段階に入ります。越境ECを始めるには、いくつかの方法が存在し、それぞれにメリットとデメリットがあります。自社の事業規模、予算、人的リソース、そしてどのようなブランド戦略を描くかによって、最適な選択肢は大きく異なります。ここでは、代表的な3つの出店方法を比較検討し、自社に合ったプラットフォームを見つけるための指針を示します。
4.1 主な出店方法3つのメリットとデメリット比較
越境ECの出店方法は、大きく分けて「自社ECサイトの構築」「海外ECマーケットプレイスへの出店」「越境EC代行サービスの利用」の3つに分類されます。それぞれの特徴を正しく理解し、自社の状況と照らし合わせることが成功への第一歩です。
〇方法1 自社ECサイトの構築 Shopifyなど
自社で独自のオンラインストアを立ち上げ、運営する方法です。近年では「Shopify(ショッピファイ)」のように、多言語・多通貨対応の決済システムを比較的容易に導入できるプラットフォームが登場し、自社ECサイトで海外展開するハードルは下がっています。
メリット
- 高いデザイン性とブランディングの自由度: サイトのデザインや機能を自由にカスタマイズできるため、企業や商品のブランドイメージを最大限に表現できます。独自のキャンペーンやプロモーションも展開しやすく、ファンを育成する戦略に適しています。
- 顧客データの活用: 購入者の情報を直接管理できるため、顧客分析やCRM(顧客関係管理)施策に活かせます。メールマガジンやリピート購入を促すアプローチがしやすく、顧客と長期的な関係を築くことが可能です。
- 手数料の低さ: マーケットプレイスに比べて販売手数料が低い傾向にあり、利益率を高めやすい構造になっています。
デメリット
- 集客を自社で行う必要がある: サイトを構築しただけでは顧客は訪れません。SEO対策、Web広告、SNS運用など、自社で集客活動を行う必要があり、専門的なノウハウとコストが求められます。
- 構築・運営の手間とコスト: サイトの構築には初期費用がかかり、サーバー維持費やプラットフォームの月額利用料などのランニングコストも発生します。また、言語対応、海外決済、国際配送の手配も自社で行う必要があります。
- 初期の信頼性確保が課題: 立ち上げ当初はサイト自体の知名度が低いため、顧客からの信頼を得るための工夫や実績作りが必要です。
〇方法2 海外ECマーケットプレイスへの出店 eBayなど
「Amazon(アマゾン)」や「eBay(イーベイ)」、「Tmall Global(天猫国際)」といった、すでに多くの海外ユーザーが利用している巨大なECモールに出店する方法です。
メリット
- 圧倒的な集客力: マーケットプレイス自体の知名度とブランド力を活用できるため、出店初期から多くのユーザーの目に触れる機会があります。自社でゼロから集客する手間を大幅に削減できます。
- 出店のハードルが低い: ECサイトを自社で構築する必要がなく、アカウント登録と商品登録を行えば比較的短期間で販売を開始できます。
- 高い信頼性と利便性: ユーザーは普段から使い慣れたプラットフォームで買い物ができるため、安心して購入しやすい環境が整っています。決済や配送のシステムが整備されている場合も多く、事業者の負担を軽減できます。
デメリット
- 価格競争の激化: 多くの競合他社が同じプラットフォーム内で販売しているため、価格競争に陥りやすい傾向があります。
- ブランディングの制約: モールが定めたフォーマットに従う必要があり、デザインや機能の自由度が低いため、独自のブランドイメージを打ち出しにくい側面があります。
- 高い販売手数料: 売上に応じて数%から十数%の販売手数料が発生するため、自社ECサイトに比べて利益率が低くなる可能性があります。
- 顧客データが取得しにくい: 顧客情報はマーケットプレイスが管理するため、自社で自由に活用することが難しく、リピート施策などに繋げにくい場合があります。
〇方法3 越境EC代行サービスの利用
サイト構築から翻訳、マーケティング、カスタマーサポート、国際物流、決済まで、越境ECに関わる一連の業務を専門企業に委託する方法です。自社のECサイトに専用タグを設置するだけで海外販売対応が可能になるサービス(例: WorldShopping BIZ)や、包括的なサポートを提供するサービスなど、形態は様々です。
メリット
- 専門知識とノウハウの活用: 言語の壁、各国の法律や関税、複雑な国際配送といった専門的な課題をプロに任せられるため、スムーズな事業運営が可能です。
- リソースの集中: 煩雑な実務をアウトソーシングすることで、自社の従業員は商品開発やマーケティング戦略の立案といったコア業務に集中できます。
- リスクを抑えたスピーディーな開始: 自社で人材を確保したり、システムを構築したりする必要がないため、失敗のリスクを最小限に抑えながら、迅速に海外展開をスタートできます。
デメリット
- 外部委託コストの発生: 代行手数料や月額利用料などが発生するため、すべてを自社で運営する場合に比べてコストが高くなる傾向があります。
- 社内にノウハウが蓄積しにくい: 業務をすべて外部に依存してしまうと、社内に越境EC運営の知見が蓄積されず、将来的な事業拡大の足かせになる可能性があります。
- パートナー企業の選定が重要: サービスの質や対応範囲は代行会社によって大きく異なります。信頼できるパートナーを見つけなければ、期待した成果が得られないリスクがあります。
4.2 自社に最適なプラットフォームの選び方
ここまでご紹介した3つの方法には、それぞれ一長一短があります。自社にとって最適な方法を選ぶためには、以下の4つの視点から総合的に判断することが重要です。
1. 事業の目的と規模
「まずはテスト的に海外の反応を見たい」という段階であれば、低リスクで始められる海外マーケットプレイスが適しています。一方、「海外事業を本格的な収益の柱に育てたい」「ブランドの世界観を大切にしたい」という場合は、中長期的な視点で自社ECサイトの構築を検討すべきでしょう。
2. 予算と社内リソース
潤沢な初期投資が可能で、Webマーケティングや語学に堪能な人材が社内にいる場合は、自社ECサイトで自由度の高い運営を目指せます。反対に、予算や人材が限られている場合は、マーケットプレイスへの出店や、必要な業務だけを委託できる代行サービスの利用が現実的な選択肢となります。
3. ターゲット国と商材の特性
販売したい国や地域で最も利用されているECプラットフォームはどこかをリサーチすることが不可欠です。例えば、中国市場ならTmall Global、東南アジアならShopeeが強い影響力を持っています。また、独自性の高いニッチな商品や、高価格帯のブランド品は、世界観を伝えやすい自社ECサイトでの販売が向いています。
4. ブランド戦略
価格の安さよりも、品質やデザイン、ストーリーといった付加価値で勝負したいのであれば、ブランディングがしやすい自社ECサイトが最適です。まずは販売実績を積み重ねて知名度を上げたいという戦略であれば、集客力のあるマーケットプレイスを活用するのが効果的です。
これらの要素を多角的に検討し、自社の現状と将来のビジョンに最も合致する方法を選択することが、越境EC成功の鍵となります。一つの方法に固執せず、事業フェーズに合わせて複数の方法を組み合わせるハイブリッドな戦略も有効です。 当社のノウハウが詰まった、情報収集や比較検討に役立つ資料を、無料配布中
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5. 【費用】越境ECにかかるコストの内訳
越境ECを新たに始めるにあたり、費用の全体像を正確に把握することは事業計画の根幹をなします。国内ECとは異なり、海外との取引には特有のコストが発生するため、事前にどのような費用がかかるのかを理解しておくことが成功の鍵となります。コストは大きく分けて、事業開始時に必要な「初期費用」、毎月固定で発生する「月額費用(運営費)」、そして売上に伴い変動する「変動費用」の3つに分類できます。ここでは、それぞれの費用の内訳を詳しく解説します。
5.1 初期費用と月額費用
初期費用と月額費用は、選択する出店方法によって大きく変動します。自社でサイトを構築するのか、既存のマーケットプレイスを利用するのかによって、必要な投資額が変わるため、自社の事業規模や戦略に合わせて検討する必要があります。
初期費用として考えられるのは、ECサイトの構築費用です。Shopifyのようなプラットフォームを利用する場合でも、デザインテーマの購入費、機能拡張のためのアプリ導入費、独自ドメインの取得費などが発生します。外部の制作会社に依頼する場合は、数十万円から数百万円規模のデザイン・開発費用がかかることもあります。一方、AmazonやeBayといった海外マーケットプレイスへの出店では、サイト構築が不要なため初期費用を抑えられる傾向にあります。
月額費用は、事業を継続する上で毎月発生する固定費です。自社ECサイトの場合、プラットフォームの月額利用料やサーバー維持費、有料アプリの利用料などが該当します。例えばShopifyでは、事業規模に応じた複数の料金プランが用意されています。マーケットプレイスでは、大口出品プランなどに伴う月額登録料が必要です。これらの固定費は売上がない場合でも発生するため、無理のない範囲で計画を立てることが重要です。
5.2 販売手数料と決済手数料
販売手数料と決済手数料は、商品が売れるたびに発生する変動費用です。売上が増加するほどこれらの費用も増えるため、利益計算において非常に重要な要素となります。
販売手数料は、主に海外ECマーケットプレイスで発生するコストです。商品が売れた際に、その販売価格の一定割合をプラットフォーム側に支払う仕組みで、料率は商品のカテゴリによって異なります。例えば、Amazon Global SellingやeBayでは、カテゴリごとに細かく手数料が設定されています。この手数料を考慮せずに価格設定を行うと、利益が想定より大幅に減少する可能性があるため注意が必要です。
決済手数料は、顧客がクレジットカードやPayPalなどで支払いを行う際に、決済代行会社へ支払う手数料です。海外向けの決済は、国内取引に比べて手数料率がやや高く設定されていることが一般的です。また、顧客の現地通貨で決済を受け付け、日本円で入金される際には為替手数料も発生します。StripeやPayPalといったグローバルな決済サービスを利用する場合、これらの手数料体系を事前に確認し、販売価格に適切に反映させる必要があります。
5.3 送料と関税
海外への商品発送に伴う送料と、輸入国で発生する関税は、越境EC特有の複雑で重要なコストです。これらの取り扱いを誤ると、顧客とのトラブルに発展する可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
国際配送料は、国内配送に比べて高額になりがちです。配送料を事業者と顧客のどちらが負担するのかは、販売戦略において重要な判断となります。送料無料は顧客にとって魅力的ですが、その分事業者の利益を圧迫します。配送には、日本郵便が提供するEMS(国際スピード郵便)や国際eパケット、またはDHLやFedExといった国際クーリエ便が利用されます。それぞれ料金、配送スピード、追跡サービスの有無などが異なるため、商品の価格帯やターゲット国の事情に合わせて最適な配送方法を選択することが大切です。
関税や現地の消費税は、商品が輸入国の税関を通過する際に課される税金です。原則としてこれらは輸入者である購入者の負担となりますが、その旨を事前にサイト上で明記しておかなければ、「商品以外に高額な請求をされた」といったクレームの原因となります。販売条件として、関税込みの価格で販売するDDP(仕向地持込渡し・関税込条件)と、関税は購入者負担とするDDU(仕向地持込渡し・関税抜条件)があります。
どちらを選択するかを明確にし、顧客に誤解を与えないような表示を徹底しましょう。また、国によっては一定金額以下の輸入品には関税がかからない「デミニマス値(免税の閾値)」が設定されているため、主要なターゲット国の制度をリサーチしておくことも有効です。
6. 【成功の秘訣】越境EC事業を軌道に乗せるには
越境ECは、ただ商品を海外向けに販売すれば成功するという単純なものではありません。国内ECとは異なる市場環境や文化、法規制など、乗り越えるべき課題が数多く存在します。しかし、ポイントを押さえて戦略的に事業を進めることで、成功の確率は格段に高まります。ここでは、越境EC事業を本格的に軌道に乗せるための3つの重要な秘訣を詳しく解説します。
6.1 徹底したターゲット国のリサーチ
越境EC成功の第一歩は、参入する国や地域(ターゲット国)を深く理解することから始まります。「日本で人気だから海外でも売れるだろう」といった安易な思い込みは、失敗の最も大きな原因の一つです。データに基づいた客観的な視点で、市場を徹底的にリサーチすることが不可欠です。リサーチすべき項目は多岐にわたります。
まずは市場規模、成長率、競合の動向といったマクロな視点での調査が必要です。どのような商品カテゴリーに需要があり、現地の消費者がどの程度の価格帯の商品を購入しているのかを把握します。次に、ターゲットとなる顧客層のペルソナを具体的に設定し、そのライフスタイルや価値観、購買行動を深く掘り下げます。例えば、どのようなSNSを利用し、誰のレビューを参考にし、どのような決済方法を好むのかといった情報は、後のプロモーション戦略やサイト構築に直結します。
さらに、宗教や文化、祝祭日、タブーといった文化的背景への理解も欠かせません。特定の色や数字が持つ意味、ギフトシーズンの違いなどを把握することで、現地消費者の心に響く商品展開やキャンペーンの実施が可能になります。これらの情報は、政府機関が公表する統計データや民間の調査会社のレポート、現地のインフルエンサーへのヒアリングなどを通じて収集することができます。
6.2 効果的なプロモーション戦略
優れた商品を用意しても、その存在がターゲット顧客に認知されなければ購入にはつながりません。日本での成功体験がそのまま通用するとは限らないため、ターゲット国に最適化されたプロモーション戦略を構築することが成功の鍵を握ります。
まず取り組むべきは、現地の言語や検索エンジンに合わせたSEO(検索エンジン最適化)対策です。ターゲット顧客がどのようなキーワードで商品を検索するのかを調査し、自社サイトや商品ページに反映させることで、オーガニックな流入を確保します。
次に、ターゲット国で主流となっているSNSプラットフォームを活用したマーケティングが有効です。例えば、北米やヨーロッパではInstagramやFacebook、東南アジアではFacebook、中国ではWeibo(微博)やWeChat(微信)など、国や地域によって影響力の強いメディアは異なります。現地の文化やトレンドを熟知したインフルエンサーを起用したプロモーションは、ブランドの信頼性を高め、効果的に認知を拡大させるための強力な手段となります。
また、現地の祝祭日やセール時期(例:ブラックフライデー、独身の日など)に合わせたキャンペーンや広告出稿も売上拡大に大きく貢献します。プロモーションにおいては、単に日本語を翻訳するだけでなく、現地の文化や慣習、消費者の感性に寄り添った「ローカライゼーション」を徹底することが、顧客の共感を得る上で極めて重要です。商品のキャッチコピーからクリエイティブ(画像や動画)に至るまで、細部にこだわることが成功への近道となります。
6.3 信頼できるパートナー選び
越境EC事業では、言語、法律、物流、決済、マーケティングなど、自社だけですべてを完璧にカバーするのは困難です。各分野の専門知識を持つ信頼できるパートナーと連携することで、事業のリスクを低減し、スムーズな運営を実現できます。
特に重要なのが物流パートナーです。国際配送には、通関手続きや関税の計算といった専門的な業務が伴います。配送遅延や商品の破損は顧客満足度を著しく低下させるため、安定した配送品質と手厚いサポート体制、そして明確な料金体系を持つ物流業者(フォワーダーなど)を選ぶ必要があります。
また、決済代行パートナーの選定も売上を左右する重要な要素です。クレジットカード決済だけでなく、ターゲット国で広く普及している決済手段(例:PayPal、中国のAlipayやWeChat Payなど)を導入することで、購入のハードルを下げ、カゴ落ちを防ぐことができます。
さらに、現地の市場に精通したマーケティング支援会社や、多言語対応が可能なカスタマーサポート代行会社も心強い味方となります。パートナーを選ぶ際は、実績や専門性はもとより、自社の事業規模やビジョンを理解し、円滑なコミュニケーションが取れるかどうかを重視しましょう。複数の企業を比較検討し、長期的な視点で協力関係を築けるパートナーを見つけることが、越境EC事業を継続的に成長させるための基盤となります。
7. まとめ
国内市場の縮小などを背景に、海外へ販路を求める企業にとって越境ECは重要な選択肢です。販路拡大による売上向上といった大きなメリットがある一方で、言語や法律、配送など乗り越えるべき課題も存在します。しかし、Shopifyでの自社サイト構築や海外ECモールへの出店など、自社に合った方法を選択し、十分な準備を行えば成功の可能性は高まります。本記事で解説した注意点や成功の秘訣を参考に、海外展開への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
当社のノウハウが詰まった、情報収集や比較検討に役立つ資料を、無料配布中
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それではまた。
アンドファン株式会社
中小企業診断士 田代博之









